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2017/11/24

夢魔のアルプ:生まれ変わった王子


 

 


そろ~・・・・そろ~~・・・・

 


うわっ!!

 

 

 

 

へっへへ、驚いたかぁ~?
ぶっは!アンタ凄い顔、目玉落っことすぞ?
・・・・はぁ?変な奴、ここはアンタの夢の中だから
そんな風に周りを見渡しても、な~んにもならないぞ?

 

 


そっ!アンタ、自分の事なのに覚えてないの?
今日は雨が降って、早めに食事を取って眠った。
ちなみに今日の夕飯は、チリコン・カルネ。
バスに入れたソルトは、東国の花の香りがするソルト。
・・・・ぷっ・・・・あっははは!!
そりゃ、まぁ・・・俺は何たって、夢魔だからな。
俺に解らない事なんてねーよ?
人間の夢に邪魔して、色んな奴の心を見通せる能力があるからな!

 

 

 

あぁ?この紐?・・・・ふん、いいだろう?別に。
だっ!!こら、引っ張ろうとするんじゃねぇ!お触り禁止っ!!
ばっ・・・良いんだよ、継接ぎされてても立派な四肢だから!
はぁ?ほれ、見てみろ。普通に動くだろ?不便な事なんかねーよ。

 

 

・・・まぁ、確かに一般的には”操り人形”って呼ばれてるけど
俺はそんじゃそこらの”操り人形”じゃないんだぞ!
人間の夢の中に侵入して、心を漁る立派な夢魔なんだからな。
ちなみにそれを記憶する事も得意だから、アンタの好きな”語り屋”なんかより
よーっぽど面白い話をして、アンタの眠りを妨げてみせるぞ?

 

 

 


なんだよ、アンタ・・・その疑心の目。
まさか俺の言ってる事が、信じられねーってか?
よーし、じゃあ俺がどれだけ凄い夢魔なのかを見せてやるよ。
そうだな・・・アンタから語り屋の匂いを感知出来たから来たけど
薄っすらアイツの匂いも残ってるな。
・・・・よし、じゃあお前に、面白い奴の心を見せてやるよ。

 

 

 

あぁん?そのまま、目を瞑るだけで良い。
俺はあの低能な語り屋とは違って、言葉で語ったりはしない。
アンタが夢の中に居るなら、いくらだって夢を見せてやれる。
解ったら素直に、目を瞑っとけ。

 

 

 

よし、視界が暗転するまで、そのままで居ろな?
次に目を開く時は、瞼を通して光を感じる時だ。
光を感じたら目を開け、そうすれば”奴”の心がアンタの脳ミソに直接見せてくれる。
注意点はひとつだけ、息をしない事だけだ。
あ?安心しろ、アンタが意識さえしなければ、呼吸なんざ必要としなくなる。
解ったら目を瞑って、そして黙っとけ。息を止めて、な。
・・・・・・・・・よし、それじゃあ行くぞ。
秘密にされた、奴の・・・・奴だけの心を覗き見だ。
俺の能力を、しっかりとその感覚神経で感じろよ。

 

 

 

 

 

*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,.

 

 

 

 


生まれ変わった王子
~アーリックの心~

 

 

 

 

 

 

 

”ねぇウル、俺の事、好き?”

 


あの日、私は二度目の誕生日を迎えた。
ダミアンの腕に抱かれ、まるで気分は母体に押し込められた胎児の様だった。
胎動を聞く様にして、私は自らの心音を体中で感じていた。
腕を意識すれば、そこが脈打つ。目玉を意識すれば、そこが波打つ。
そうする事で”生みの苦しみ”を緩和する様に、私は自然とそう勤しんだ。

 

 


それまでの私は、特に”何か”を感じたりはしていなかった。
例えば”自分がどれ程に不幸か”とか”自分がどれ程に欲深いか”とか。
私が考える事と言えば、自らが罪深く、そして愚か者だと言う事ばかりで
とどのつまり”自分の罪”その物に目を向ける事は無かったのだ。

 

 


ダミアンはそんな私を、いつもどんな思いで見ていたのだろう。
疑問に思えど、ダミアンの胸の中で感じる彼の体温は温かい。
・・・・・・・・私なんかよりずっと温かい。
だからきっとダミアンは、そんな私に対して
”悲哀”の目を向けていたんだと、その瞬間思ったものだ。
だからこそ、生みの痛みに耐えられた。生まれ変わる事を願ったのだ。
ダミアンが望むのなら、私もそれに応じ様と。

 

 

 


”ウル、解る?この世界は皆、俺たちを恐れているみたい。”

 

 


生まれ変わりを終えて、初めて迎える夜は新鮮だった。
私の見知る、全ての物の声が聞こえる様だった。
何も知らない、知らないで生きていたんだと、そう思った。
ダミアンは嬉しそうに私を見つめていた。
あぁ、そうか・・・・ダミアンは一人で、こんな風に世界を見ていたのか。
私と共に合ったけれど、それは本当の意味で共に合った訳では無かったのだな。
生まれ変わり、改めて彼と私を隔てる物は無くなった。
だからこそ、ダミアンの笑みの意図を、御幣なく受け止められた。

 

 

 

ダミアンは今まで、あの小さな体で感じていたのだ。
当たり前に在る世界、その存在の全ての意味を感じていたんだ。
空に浮かぶただの月、それがこんなにも力を世界に注いでいた事も
夜に鳴く虫の声が、本当は暗闇に怯えている事も
風がなびく音が、闇の浸食を止めている事も
黒い雲が起こす嵐が、こんなにも災厄を拒んでいる事も。
悲鳴にも聞こえるかも知れない、断末魔の叫びにも聞こえるかも知れない。
世界は生きている。・・・私が生まれ変わる以前よりずっと。

 

 

 

 


”ウル、君の名前・・・俺、大好きだよ。”

 

 

 


月夜に照らされた、真紅の瞳が下弦の月のしなりを見せる。
私はそんなダミアンの言葉に、短く”私もだよ”と答えて見せた。
Uric、何度だって両親に呼ばれた私の名前。
その名に秘めたる意味は”狼の様に残忍な支配者”

 

 


幼い頃、古い文献を読み漁っていて、偶然自分の名の意味を知ったあの日。
その意味を知って、酷く戸惑い、そして両親を詰った記憶がある。
”僕は残忍な王になんて、絶対になりはしない!”
甲高い声が王宮の高い天上に響き、慌てた従者が私を抱き止めた。
私が生まれて初めて、他人を殺してやろうと思った瞬間だった。
血が滾り、奥歯がギリギリと欠けてしまう程に怒りがこみ上げた。

 

 


だけども両親は、冷めた顔色を、一つも変えずにこう言ったのだ。
”国を統べる者に、必要な事だ”と。
私は怒りを抑えきれず、その場で咄嗟に舌を噛み切ろうとしたが
従者が私の口に指を突っ込み、それを必死で抑えてくれた。
初めて”人間の肉”を深く噛んだ時、あの時の感触は今でも覚えている。
表面の肉は幾分か固く、歯が食い込む瞬間にグニュリと筋っぽく抵抗する。
その感覚は恐ろしく、幼い私は思わず気を失ってしまう程の出来事だった。

 

 

 

その時からだろうか、私が自らに”言い様のない恐怖”を抱いたのは。
狼の様に牙を向き、他の血肉を喰らい尽くし、暗い森で暮らす
そんな自分が夜毎、夢枕に現われ、幼い私を見てあざ笑っていた。
”お前は私の様な自分を、所望かな?”
真っ黒に汚れた獣の様な姿の私は、いつもそんな風に私に問うた。
だから私は”王に等、なる物か。この国は王等必要とはしていない。”
そんな風に自分に、言い聞かせる事で恐怖を緩和して過ごしていた。

 

 

そんな幼い感情は、いつしか音楽によって救われた。
国の人々が自由に奏でる、あの美しい旋律に恋をして
いつしか王宮を抜け出して、私もその一部になろうと思っていた。
みすぼらしい服を着て、みすぼらしい家に住み
質素な生活、質素な食事をし、気品溢れるバイオリンを奏でよう、と。
だから全てを捨て、体とバイオリンひとつで町へ出た。
王族の自分、それを囲む全てから逃げる様に。

 

 

 

・・・・・名前も置いて行きたかったけれど、何故か”それ”を躊躇った。
今思えばこの名は、私がダミアンと出会う為に用意された”運命の目印”だったのかも知れない。
嵐の次の日、私の腕の中で冷たくなった彼が、私を”ウル”と呼んだ事を思えば
この世に神は確実に存在し、どんな者へも平等に救いの手を差し伸べられるのだろう。
私の場合は、その救いがダミアン。そして私の名は、救世主を迎える為の大事なサイン。
幼い頃の私が、嫌悪した醜い名前。今はダミアンのお陰で、とても耳心地が良い名前。

 

 

 

”生き物はさ、明るい場所が好きなんだよ。
みんなそうだから、弱い生き物は夜を好む様になるんだ。
夜は皆眠ってしまうでしょう?
強い奴も、意地悪な奴も、みんなみんな。
だから弱い奴はみんなの居ない、夜を生きる様になる。
だから夜は”美味しい物”がたくさん落ちているんだ。”

 

 


ダミアンは言う”だから俺達は、夜に演奏会を開こう”と。
いや、私達にはそれが”仕事”だから、と。
以前ならその意図を汲み取ることが出来なかったかも知れない。
だけども今の私、アーリック・テオフィルス・ロデリックになら容易く汲み取れる。

 

 


そう、どんなに苦しんだ所で”腹は減る”のだ。
私達は二人、食える物を喰って暮らす他ないのだ。
いくらパンをかじろうとも、いくらスープを飲み干しても満たされない空腹。
それが私達の体に居座る限り、他の選択肢は何れも意味が無い。

 

 

 

ほら現に、今もお腹が空き、腹の虫が”飯をよこせ”と騒ぎたてている。
胃酸が喉まで焼き、胸が締め付けられるように痛むほどの空腹だ。
ダミアンは何年も”本当の意味での空腹”を味わった。
・・・・可哀想な子、ダミアン。これからは私も、彼と共にあろう。
月夜に照らされて、顔を綻ばせたまま空を見上げる、長い睫にそう誓った。

 

 

 


あの日、私は二度目の誕生日を迎えた。
それは私の中の全てを、大きく包むような変化だった。
ダミアンが、私に言ってきた全ての言葉を思い起こすと
”それ”の全ての意味が、今まさに理解出来る気分になれた。

 

 


闇夜を恐れる生き物、必死になって火を起こして灯りを点す。
それは自然の理の様に、ごくごく自然な現象であった。
だからこそ、人間はその理に背いては生きられぬのだ。

 

 


美しい物だけを求め、豊かさだけを求め、完全だけを求めて。
汚い物を避け、貧しさを恐れ、不完全を拒む。
全ては表裏一体であるのに、人間の”それら”への関心は薄い。
少し前の、私がまさにそうであったかの様に。

 

 

”それ”を餌に群がる生き物、それを誰が罪だと裁くのであろう。
神?・・・・そうだとしたら、神は何故、私達の様な者を野放しにするのであろう。
それどころか、私とダミアンを示し合わせる様にして巡り合わせた。
もしも私達が”災厄”なのだとしたら、何故神はお許しになっているのだろう。
私達は毎晩、どこかの教会にお祈りに行く。
神を信仰する想いは、人間と何一つ変わらぬし、神は同じく私達を受け入れてくれている。
では何故、私達は人に怯えられるのだろう。
私達が悪である由縁は、一体どこにあるのだろう。

 

 

 

”ウル?見てよ。世界って色んな色してる。
キレイな色じゃない、あの腐った林檎みたいな色も世界の一部。
・・・・俺は好きだけど、何故人間は嫌うのだろうね?
ウルになら、理解出来るんじゃない?俺に教えてよ。”

 

 

 

そう、私なら幾分か解る。少なくとも、ダミアンよりはずっと。
だけど私にだって理解出来ない、少し前の自分が考えていた事なんて。
・・・・・・・もう、きっと生まれ変わる前の自分には、どう足掻いても戻れない。

 

 

・・・・きっと、私達を恐れるのは”人”だ。
その他の物が私達を恐れるのは”人を愛するが故”だ。
・・・・あぁダミアン、君は何年もの間、独りでこんな想いと戦っていたんだね。
逃げる者を追いかける、逃げる者は可哀想。
だけど・・・・追いかけ続ける者も、同様に”可哀想”だったんだね。

 

 

 

”ねぇウル。お腹空いた・・・”

 

 

青白い頬をこちらに向けて、赤い瞳が私を横目に見る。
表情がコロコロと変わって、欲望のまま生きる彼は”私の救世主”そのものだ。
だから私は彼にニコリと微笑みを返すと、真っ赤に染めた祖国の旗を腰に巻いて立ち上がる。

 

 

 

”私もお腹が空いて居るんだ。さぁ、そろそろ街に向かおうか。”

 

 

真紅の外套を翻し、座ったままのダミアンに手を差し伸べる。
すると彼は、嬉しそうに満面の笑みを浮かべて”うん”と私の言葉に応えて見せた。
しっかりと握られた手は、私と知り合った頃よりグンっと大きくなった。
だけどもその柔らかさはあの頃のまま、何も変わらずそこに在る。
私が生まれ変わり、そして全てはダミアンと共に在り続ける。
これを罪と呼ぶのなら、何が善で何が悪だと言うのだろう。

 

 

さぁ、今日も街で演奏会を開こう。
今日もきっと私達の奏でる旋律は、人の心の隙間を侵食する。
彼らは幸福感に満ち、私達は空腹を満たす。
久々に食事をするんだ、きっとダミアンはさぞ喜ぶぞ。
・・・・ダミアンが望むなら、私はいつまでも永劫”残忍な支配者”で在り続けよう。

 

 

 

 

*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,.

 

 

 

お~い、おいおいおい?
アンタ、何すっ呆けた顔をしてるんだよ。
そんな顔してっと、口の中が乾燥しちまうぞー。

 

 

・・・・う~ん?知ってる奴の記憶だった、って?あっはは!
そりゃ当たり前だ。これはアンタが会った、異国の王子の記憶だから、な。
”宵闇の演奏家”なんて呼ばれて、ここらへも現れてるぜ?
んぁ?奴は何者か、って?
んな事、俺が知ってる訳ね~だろ。
俺は最初に言ったとおり、夢魔ってだけだからな。

 

 


ん~?じゃあ、なんでアンタの夢に現れたか、って?
そんな事決まってるじゃね~か。これが”必然”だったからだよ。
アンタ、語り屋の奴の匂いがプンプンしてるから
”あぁ、そろそろ俺も遊びに行っちゃおう”って思っただけ!

 

 


どう?語り屋の夢物語なんかより、他人の記憶を喰らえる俺の夢の方が良いだろう?
・・・・さぁ?アーリックがその記憶を大事に思ってるか、なんて事は俺、どうでも良いし。
それよりアンタの感想!語り屋より面白かっただろ?俺。

 

 


・・・・・なんだよ、それ。つまんねー奴。
せっかく俺がヒントをあげたのに、そんな事言っちゃうわけ。
・・・・だから人間って嫌い、下らない。
あ~あぁ!言われなくても帰ってやるよっ!
ま、嫌だと言っても俺はまた、アンタの夢に現れるから。
・・・・・・それが俺の仕事、使命だから。

 

 


あぁ、お近づきの印しに俺の名を教えるよ。
人形師、オセの最高傑作の人形にして、誇り高き夢魔、名をアルプと言う。
じゃ、また遊びに来るよ。・・・・・・・アンタの夢に、ね。
ま、それじゃあゆっくり眠って、良い夢でも見て。
・・・・・・・へっへ、んじゃあな。

 

 

 

 

 

 

 

fin............


 
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