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2017/06/28

語り屋と君:赤い星②

 

こんにちは。

今日は約束通り、パイを持ってきたよ。
チョコとカシューナッツとラムの効いた
とっても美味しいパイだよ。




あはは、そうだね。
ママの世界一のパイを食べながら
この前の続き・・・
赤い星を話そうか。




あぁ・・君の家の椅子は座り心地良いね。
ふふ・・・心が温かくなる心地だ。




あ、ありがとう。
アールグレイ・・かな?良い香りだ。



さぁ、お話を始めよう。
誰かさんの
夏の夜の思い出の1ページを
君にプレゼントだよ。





*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,.

赤い星



「いて座のさ、矢が狙ってる物って・・・何か解るか?」


男の子は突然、視線を彼女に向けてそう呟く。
彼女の目はさっきまで彼の指を追っかけていたんだから
急にその標準を失って彷徨っている。





「えっと・・・何を狙ってるのかな・・・」





そう言って、彼がやったみたいに指で空の星を結ぶと
おぼろげながらに、いて座の矢の先が見えた気がした。
その先をまた指でなぞって行く。
暗い夜空を撫でる様に、ゆっくりと。





「あ・・・!!あれ・・・アンタレス・・・?」






そう、辿った先には夏の夜空に一際輝く赤い星
蠍座の心臓があった。





「そう!正解っ!」




彼女の答えを聞いた男の子は、また嬉しそうに顔を崩して
おもいきり彼女の頭を撫でた。
そりゃもう、ぐしゃぐしゃと・・・エチケットがなってない位。



「もう!止めてよ、髪がぐしゃぐしゃになっちゃうよ!」




ほら、案の定彼女を怒らせちゃった。
小さい紳士はまだまだ女性の心が解らないようだね。
同じ子供でも、女性は男よりも心が急いで大人になるって言うのに。




「ごめん!・・でもさ、嬉しくて!」




男の子は怒る彼女からパッと手を離すと、そのまま寝転がる。
謝っておきながら、彼の顔は未だに溶けてしまう位に笑っている。
本当に・・・何がそんなに面白いんだか。




「お前、蠍座だろ?・・・俺はいて座・・・だから見せたかったんだ」



まだ髪を気にして手ぐしで整えていた彼女は
彼の突然の言葉に少し身動きを止めた。
そして少し考えてから、怪訝そうな顔をして口を開いた。




「それって・・・私のことが嫌いだって言いたいの?」





不機嫌そうに視線を落として、そう呟く彼女。
その横で寝転がっていた男の子は慌てた様子で起き上がってくる。





「え・・!?なんで!?どう考えたら、そういう解釈になるんだよ!?」





大きく張り上げた声が、その場を一周して返ってきそうな程だった。
あんなに大きな空も、広がる草花も
彼ら以外の全てが制止してしまったような一瞬。





「だって・・・だってそうでしょ?いて座の矢は私の心臓を狙ってるんだもん」






哀しそうに響く、幼くて小さな声。
彼女はすっかり肩を落とし、寂しそうに目を伏せてしまった。
対して彼は真逆の反応だった。
慌てて誤解を解こうとするけど、あと一息の所で声が出ない。
そうこうする内にも彼女は間違った解釈が原因で
どんどん落ち込んでいる様だった。





「殺したくて狙っているんでしょ?じゃなきゃ心臓なんて狙わないわ」






そう言う女の子の目は真っ赤に腫れ上がっていた。
この空に散らばる何億光年も離れて届く
奇跡の粒よりも輝く涙をポトポトと落としていたんだ。
それを月の光の反射で見た彼は大慌てさ。
どうしよう!と焦れば焦るほど
無駄に腕を右に左にと、動かして誤魔化すだけで
肝心の言葉を出せないでいた。





「明日には・・・もう私はここに居ないのに・・・・」






堪らずにそう呟く、女の子の声は震えてた。
そう、彼女は明日の昼には
生まれ育ったこの街を出て行く。
家族の都合で、遠い遠い街に引っ越す事になっていた。
だからこそ、彼は今日
こんな夜の遅い時間に彼女を連れ出した。
・・・・この丘に連れて来たんだ。





彼には意図があった。
もちろん彼女が言う様な事ではない。
だけどね・・・だけど・・
それを口にしてしまえば・・・
全てを打ち明けてしまう事になるから。
言ってしまえば良いのだけれど
それを言う事が出来なかったんだ。




今日この日にこの二つの星座を見せたのも
勇気が出ない彼なりの
苦肉の策だったのだけれど。



失敗してしまったのだから
何か違う策を、この短い時間で考えなきゃいけないね。
さぁ・・・夏の宵に、小さな彼らは一体何を見たのだろう。
敵対する毒虫を殺そうとするいて座?
それとも・・・・

 

*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,.

 


ふぅ・・・・今回は眠らずに聞いてくれたね
あ、ううん・・そうじゃないよ
別に眠ってくれたって構わない
人が眠っている姿は・・・とても愛らしいからね。




あ、僕がね・・・語り屋をやっている理由も”それ”なんだ。
僕のお話を聞いている時
人はとっても愛らしくなるから。




文字もなく、絵もない世界を
人は脳内でイメージしながら聞くんだ。
それには力をたくさん使う。



だから・・・顔はこの上ない程に無防備なんだよ。
口を開けていたり、一生懸命僕の目を見たりして。
そんな姿の人が、僕は大好きで
だからこの仕事をしているんだ。

 

ところでパイはどうだった?
あ、あはは!
君に気に入ってもらえて何より!
ママにもそう伝えておくよ、ありがとう。




あ、そうだね・・このお話の事に戻ろうか。




このお話の結末は見えたかな・・・?
え、なんで怒っているの?
・・・・まぁ、確かに中途半端だよね。
でも今回のは・・・解るはずだって思うんだけどなぁ。
え?ハッピーエンドじゃないのか、って?
君、勘違いしていないかい?
君次第でこのお話はハッピーエンドにも
バッドエンドにも変化するのだよ?





そう全ては君が変えるんだ。

 


あ、だめだ・・そろそろ時間だ。
ごめんね、次に行かなきゃならないや。
また・・・とっておきのお話を持ってくるから
いい子にして待っていてね。

 


そんな素敵な君に僕からのメッセージを送るよ。





ロマンチックなのは、とっても素敵な事だけど
相手に伝わらなければ意味が無いんだよ。
大事な事は”自分の想いを正確に相手に伝える”事だ。
物語の様に飾り付ける事じゃない。
それぞれは別々であってはならないんだ。
しっかりと想いを伝える、ロマンチックな演出なら素敵だね。
どんなに回りくどい手を考え出しても、結局自分の勇気が必要になる。
だから、忘れないで。
肝心な事は口にしないと伝わらないんだ・・・って事を、ね。


この言葉さえあれば・・・・このお話の二人の結末も・・
きっと君の結末も変わって行くよ。

 


祈りを込めて・・・語り屋より。








それじゃあ良い夢を。

 

 

 

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2011/07/03 語り屋と君 Trackback(0) Comment(0)

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