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2024/11/22

語り屋と君:赤い星①


やぁ、こんにちは。
ふふ・・・君に会うのは二回目・・・?
僕は語り屋・・・って、もうその紹介も必要ないのかな?
そう、君の聞きたいお話を今日もお話する。


うん、解ったよ・・・君って案外せっかちなんだね。
え、あぁ解った解った!無駄な話は後にしよう。



じゃあ今日も求める君にとっておきのお話をしよう。

 

もちろん今回も、お代は要らないよ。
君がどんな顔をして、このお話の結末を聞くか・・・
僕はそれだけを楽しみにしているのだから、ね。

 

今回も君にとって魔法のお話でありますように。


さぁお話の始まりだよ!
今回もおりこうさんにして
その結末までしっかり耳を傾けていてね。

 


*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,.

 


赤い星

 


ある夏の夜、小さな子供が二人・・
小高い丘を必死に駆け上がって行った。
女の子の方は息も絶え絶えで、男の子に対して少し怒っている様だ。




「ねぇ!こんな時間にお外に出たら、ママに叱られるよ!」





そう言って何度も男の子の手を解こうとする。
けれど男の子は聞く耳を持たないのかな・・・
無視する様に彼女を丘まで連れて行ってしまう。





「もう・・・私の話も聞いてよ!」





そう言って彼に悪態をつくけれど、彼はまったく気にする事も無い。
ようやく丘に上がりきった所で、男の子はそのまま一面の空を見上げる。
・・・・何かを必死に探してるみたいだね。
女の子の手を離すとポケットから小さなコンパスを出す。
あぁ・・可哀想に・・・女の子は疲れて腰を下ろしちゃった。






「あ・・こっちが南か・・」

 


 

コンパスを見て呟いた男の子は、指で空を指したまま何かを探していた。
その間も女の子は息を整える事に精一杯だ。
この丘からは他の物が何も見えない。
真っ黒な空と、それなのに薄暗く光る様に見える木の葉だけが見える場所。
こんな所に子供が二人で居る光景は少し”異様”だ。

 

 

「あ!!あった・・・!なぁ見てみろよ、あれだよ!」

 

 

しばらくして、男の子は大きな声をあげた。
振り返って女の子に何かを伝えようとしているみたいだ。
女の子もそんな彼の突飛な言動に驚いて口を開けている。




「え、なに?」




そう言い返す女の子。
男の子は尚も嬉しそうに笑顔を溢すと
女の子の傍らに腰をおろした。
そして満面の笑みで女の子に返事をする。

 

 

「ほら、俺の指の先・・・!あれがお前の星だよ!」

 


 

そう言って指した指をブンブンと振ってみる。
そんなに振っていては彼女もどこを見ていいか解らなくなりそうだね・・。
あぁ・・・案の定彼女はどこを見て良いか解らないみたい。
すごく困った顔をして、男の子を見る。





「ねぇ・・・何?何も話てくれないのに・・・・何を見ていいか解らないよ」






思った以上に、女の子は困惑していたんだろうね。
家に居ないとママにバレた時、なんて言い訳をしよう・・・
そんな風にずっと考えながら夜道を駆けてきたんだから
彼の態度は気に入らなかったんだろう。
半分泣き顔になりながら、そう彼に言う。





「あ・・・・」





彼もまた、彼女がこんな風に困惑するとは思っていなかった。
どうしても今日、彼女に伝えたい事があったから。
こんな顔をさせるために、こんな所に来たわけではなかったんだ。

 


 

「ごめん・・・ちゃんと説明するよ。・・・少し俺に時間くれないか・・・?」






急にトーンの下がった彼に、彼女も驚いたかな・・・。
彼の言葉に少し目を開いて、慌てた様子だ。
でも一瞬でも苛立ちを感じた相手だ。
だからすぐには気持ちを切り替えられなくて
そっぽを向きながら彼女は一度だけ首を縦に振った。





「あの赤い星、見えるか?」







彼女からの了承を得た男の子は一度深呼吸をすると
いつも通りの穏やかなトーンで彼女に話しかけた。
南の空におもいきり腕を伸ばして、何かを示している。






「あ・・・うん見える・・・・すごくキレイ・・・大きいね」






女の子は目を凝らして腕の先の空を見上げた。
そこにはたくさんの星が今にも空からこぼれ出そうな位浮かんでいた。
二人が見ているのはその無数の星の中のひとつ
大きく輝く赤い星だ。






「うん、あの星はアンタレスっていう星なんだ」







そう言って自慢げに鼻をこする男の子。
男っていうのは小さくても、女の子の前ではかっこよくありたいのかな。
その誇らしげな姿は、とってもキュートだ。






「あれ・・・でもよく見たら・・・その横にもたくさん赤い星があるよ?」






そんな男の子を気にも留めず、女の子がそう呟く。
彼女の言うとおり、アンタレスの少し横には同じ様な赤色の星いくつもある。
すると男の子は一層嬉しそうに笑顔を作った。
そりゃもう・・・言葉に表すなら”破顔”だね、素敵な笑顔。






「よく気付いたな!あれは線で繋ぐといて座になるんだよ」






そう言って、空を切るように指で星と星を結ぶ。
女の子はその指を辿るようにして見つめている。




「さっきの一番明るく光ってる赤い星は、蠍座の心臓って呼ばれてるんだ」




そう言ってまた南の空を指で示す。
星と星を複雑に行ったりきたりして、彼の指がさそりの姿を描く。
女の子は夢中で彼の指を視線で追っていた。
そりゃもう、その頃には目を丸くして・・・・
とっても楽しそうに、ね。





*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,.


あれ・・・ちょっと待って。
・・・・・・・
あぁ、ごめん!
せっかくお話のいい所なのに
今日は横槍が入ってしまったよ。
ママがパイを焼いたから
帰って来いって言ってる。




え、あぁ・・そうだね。
仕事だから中断はおかしいよね・・
・・・・・・
でもね、君・・・知らないだろう?
ママのパイは世界一美味しいんだ。
それも焼きたてだと尚更・・・・






あぁ・・・こんな精神状態で
君にお話を続けて話すのは・・・
とても無理があるよ・・




ほら、僕の腹の虫が鳴いてる。






あはは、ごめんね。
そう怒らないで。



そうだ、この続きを話す日は
ママのパイをお土産に持ってくるよ。
そしたら君も納得してしまうはずだよ。



でしょう?とてもいいアイデア!
君もきっと気に入るはずだと思ったんだ!


じゃあ・・・今日はここまで。


続きを話に来るときは
とっておきのパイと一緒さ。
美味しい紅茶を入れておいて、ね。





next....

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2011/07/03 語り屋と君 Trackback() Comment(0)

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