やぁ、こんにちは。
僕は欲する者に欲する話を与える使者だよ。
他の人達からは”語り屋”なんて呼ばれてる。
君に呼ばれて、ここに来たよ。
え・・・?呼んでないって・・・?
ふふ・・自分では気付かないんだよ。
気付かないうちに呼んでいたんだ。
君の言葉に出来ない気持ち
僕が拾ってここに来た。
さぁ、そんな君に
あるひとつのお話をしようね。
ん・・・・?
あぁ・・・大丈夫。
お代は要らないよ、それが僕の仕事だから。
心配しなくてもいいよ。
きっと君の求めていたお話だよ。
求めていた物を手に入れる事の出来る
魔法のお話かも知れないね。
お話の結末まで・・・
おりこうさんにして
どうか聞いていてね。
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神様とふたつ杖
ある所にね
天高い所に神様が居たんだ。
神様はいつも可愛い生き物を天上から眺めていた。
その生き物は二つの杖を支えにして立ち
少し小さな二つの杖を使って
色んな事をやってのける
それはそれは
頭の良い生き物だったんだ。
神様はね、自分の生んだ存在が
どんどん賢くなっていくのを見て
本当に、本当に嬉しかった。
あんまり可愛がるものだから
他の神様は呆れていたんだ。
それでも神様はその生き物を毎日見ていた。
食べるのも、眠るのも、歌うのも・・
時には仕事をするのも忘れて・・ね。
そんな毎日が続いたある日
一人の神様が声をかけたんだ。
「そんなに大事にしても、いつか裏切られる」
神様はその言葉に耳を疑ったんだ。
そう言ったもう一人の神様の言葉が
あんまりにも浮世離れしていて
どういうつもりなのかと不思議に思った。
「どうして?彼らは僕を裏切らない」
あんまりに不思議なもんだから
ついつい笑いがこみ上げる。
神様は本当におかしかったんだ。
そんな事、あるはずがないって信じていたから。
「可哀想な奴だ・・・そのうちに理解するさ」
だけどもう一人の神様は笑わなかった。
目じりに涙を浮かべて笑う彼を見ても
まったくつられる事なく
眉をひそめるだけだった。
「可哀想なのは君の方だよ」
この愛おしさを・・・
小さき者を愛する、この気持ちを持たない
だからそんな風に言えてしまうんだと
神様は疑わずに感じた。
だからこそ”可哀想”と口にしたもう一人の神様に向けて
”可哀想”と返したんだ。
神様は信じていたのさ。
揺るぎないこの想い
そして可愛い彼ら
そのどちらにしても
変化しない事を確信していたんだ。
良い方向に事が変化する事はあっても
それ以外に変化するとは思わなかった。
自信満々にそう言って返す神様を
もう一人の神様はじっと見つめていた。
その瞳は憐れみの目だった。
だけど神様は気付かない。
だから、もう一人の神様は諦めた。
何も映す事のない、神様の瞳に気付いたから。
そう、目の前で会話をしているはずなのに
神様の目にはもう一人の神様が映らなかったのさ。
だから・・・・・
黙って、その場を後にしたんだ。
もう一人の神様が去った後
神様は少しだけ思った。
去っていった神様の目が
少し哀しそうにしていた気がしたからさ。
だけど理由が解らない。
だから少しだけ考えてみようか、とも思った。
だから雲のふちに顔を向けて
下を眺めながら考えた。
その日も神様の愛しい小さき者たちは
ちまちまと何やら始めていた。
もう一人の神様の哀しみの理由を頭で考えるけれど
神様はどうしても下が気になって仕方がなかった。
『裏切られやしないさ、こんなに可愛いのだから』
そう、本当に健気に生きる小さき者たち。
だからこそ愛しかった。
神様はそのうち
もう一人の神様の哀しみの理由は考えない事にした。
何故なら・・・そうだね。
他人の胸の内を推し量った所で
それが正解だとも限らないから。
他人の心は他人の物で
いくら時間をかけたって自分の物にはならないから。
そう思ったら途端に下の小さき者が愛しく感じた。
いや、いつも愛しく眺めているけれど
そうではなくて、いつも以上に・・という意味だ。
だから尚更もう一人の神様の言った言葉は
神様の中で消えていった。
もう一人の神様が見せた
ほんの少しの哀しみの理由を気にしていた気持ちも
すぐに泡の様に消えていったんだ。
神様は”それで良い”
そう思いながら
その日もまた下をずっと見続けた。
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あまりに長いお話は苦手かな?
・・・すっかり眠そうにしている。
え・・続きが聞きたいって?
そうは言っても君、もうあくびを噛んでるよ。
君が目を覚ますまで
お話は中断しようね。
大丈夫、ちゃんと変わらずお話してあげる。
さぁ次回まで
ゆっくり目を閉じて眠ってね。
物語はまだ途中だから、ね。
next.....
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2011/06/11
語り屋と君
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