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2024/11/23

絵描きのヨエル:語り屋~youth of fairy tale~

ゴトゴトゴト・・・





アロー、聞こえていますか?
アロー、ご主人?
ゴトゴトゴト・・・
私はココです、ご主人?
アロー、アロー。
ゴトゴトゴト・・・





あ!!ご主人、こっちです!
ほら、あなたの目の前!
綺麗な額縁に入れていただいた
ヨエルの絵ですよ!





あぁ、やっとお気づきになられましたか。
昨晩からずっと、額を揺らしたのですが
ぐっすりお眠りしてらっしゃった様で。
あなたが目を覚ますまで、軽く6時間は掛かりました。




こっほん、驚かれるのも無理はありません。
ここでは”絵”は話さないと・・
そう私も聞き及んでおりますとも。





えぇ、私こう見えても育ちが良いので
ヨエルの様に馴れ馴れしくはいたしません。
大丈夫です、ご主人が落ち着かれるまで
私はいつまでも、こうして待ちましょう。






・・・・あれ。
もう良いのですか?
起き抜けに水を飲んだだけ・・・?





あ、あはははっ!
ご主人、さすがですね!
肝が据わっていらっしゃる。
どうりでヨエルがウキウキしながら
語り屋を描いたわけですね。




きっと予感があったのでしょう。
私を差し上げるに相応しい
”求める方”に出会えると。
彼は野生の勘だけ、一流ですから。






さて、無駄話はこれくらいにして・・・
私に与えられた使命を果たしましょう。
ご主人、お手数ですが私を壁から下ろして下さい。
そして額から、私を出していただきたい。






katariyashuusei1.jpg



見ての通り、ただの絵。
ですが私、かなりの物知りでしてね。
描かれた物を分析する事が出来るのです。






そうですね、謎多き語り屋の事も
それなりに知っていますとも。
・・・・それなり、ですが。
もちろん、ご主人よりも随分詳しい。
では・・・
あなたが知りたい
語り屋の謎を聞かせて下さい。
私はそれに、出来る限り応えましょう。
気になるところに触れて下さいね。








katariya.kao.jpg



うふふ、そこはご主人も知っているでしょう?
彼と何度も会っているのですから。
でもまぁ・・・見ていたくなる気持ち
少なからず解りますよ。



彼って顔から既に不思議ですよね。
穏やかで、いつも口元を緩ませていて。
ヨエルが言うには”笑顔以外を見た事がない”そうです。
ご主人は・・・・他の顔をご存知で?
・・・・あぁ、やっぱり。
もしかしたら彼には”笑顔”しかないのかも知れません。




この腕のリスですか?
この子達は時々、彼の腕を訪ねている様ですね。
・・・・何と・・・・どうやら彼らは
語り屋の物語を聞きに来ているそうです。
驚きましたね・・・語り屋は動物とも話せる様です。
・・・・・・彼らが言っています。
”語り屋はみんなが大好きだから”と。
まったく・・・本当に不思議な青年だこと・・・・。




katariyakahansin.jpg



うん・・・?あぁ・・・この時計ですか?
これは彼の懐中時計。
名は確か・・・プルートですね。
ふむふむ・・・この時計の話によると・・・
”ただの時計じゃない、相棒だ”と言っていますね。
相棒・・・まさしくそうでしょうね。
だって名前を付けてしまっているんですから。


おっと、この針の数ですね。
私も初めから気になってたのですが
どうやらこの針は色んな世界の時間を示している様です。
針の色でどこの世界かを、見分けているみたいですね。
忙しない彼にぴったりの時計だ。




このポッケの花は・・・・
どうやら彼のマンマが育てた花の様ですよ。
語り屋が気まぐれに、プレゼントする為
家から摘んで持って歩いているそうです。
少し不思議な色ですが・・・どれも大きくて綺麗ですね。




ふむ、このバッグのポッケの物体ですね?
あぁ・・・これはキャンディですね。
大きさも色もまちまちで、彼の性格そのもの。
これも訪れた先で、気まぐれにプレゼントする為
彼が毎度選んで持ってくる様です。



バッグからはみ出たハンカチは・・・
あ、ご主人にもこのハンカチの記憶
残っているのでは・・・?
これは彼の物語を聞いて
涙を流してしまった人の為に用意している様ですから。
他の物はボロですが、ハンカチだけは綺麗ですね。
ご主人・・・・今少し安堵しました?
あはは、それは・・しょうがないでしょう。
だって彼、自分の身なりに興味なさそうですからね・・。






katariyaneko.jpg


あ、締めはやっぱり・・・こっちのポッケの猫ですよね。
この子は・・・・謎の猫・・・みたいですね。
よく青い猫の広場をウロついている猫で
語り屋も、そして猫自身にも
猫の名前は解らない様ですので・・・飼い猫ではないのでしょう。




語り屋の右ポッケがお気に入りの様ですね。
こんな風によく勝手に入るみたいです。
・・・・でも・・・これって・・・
猫は辛くないのでしょうか?
それに幾ら彼のズボンのポッケが大きいからって
無理して入る必要がどこに・・・・?





あ・・・・いえ、猫は少し気難しい性格の様で・・・
私が語りかけても、話してくれなかったので。
だから、あくまでも私の予想ですが
猫も彼の物語を聞きに来ているのか・・・
はたまた、ただそこの居心地が最高なのか。
その理由のどちらか、かと・・・・。




どちらにせよ・・知れば知るほど解らなくなる。
彼は一体何者なのでしょうか?
・・・・えぇ、そうですね。
本当に不思議な事ばかり。
確実に言える事と言えば・・・・
彼が身なりに関心の薄い坊ちゃんである事。
それくらいだったでしょう。




いえ、まぁね・・・・。
決して汚れた召し物を着ている訳じゃないですけど・・
私とは美的センスが合わないのですよ。
こう・・・ブカブカのズボンにブカブカのポッケ。
しかもそこに目一杯、物を詰め込んで。
ベストだって、御覧なさい?
左右の丈が少し違っているんですよ。
普通なら気になる箇所では・・・?




彼はこの召し物が好きな様で・・・
ヨエルの描く彼は、全てこの召し物なんですよ。
・・・・私は少し気に入りませんね。





えぇ!!・・・・そうでしょうか?
ではご主人は・・・私が神経質である、と?







ふむ・・・ご主人の意見も・・正しいですね。
確かに・・・・彼は何を着ても・・・
彼でしかない・・・・そうですよね。
うん、彼らしいのかも知れません。









・・・・・・え?どうされました?急に。
・・・あぁ、お気遣いは不要でございます。
少し、遠い昔の出来事を思い出したまでの事。
呆けた訳ではありませんよ。





えぇ、そうですよ。
昔ね、さっきご主人のおっしゃられた言葉・・
まったく同じ言葉を
ヨエルに言われた事を思い出しまして。
えぇ、遠い遠い・・・昔のことですが。











ふぁ・・・・・
おっと、失敬・・・。
一晩中、ご主人を起こす事に必死で
眠る時間が無かった物で・・・・。








さぁ、語り屋についてお話出来る情報は
もう話尽くしてしまった様ですし
私も失礼して、ヨエルの所に戻りますよ。




あ、ご心配なく。
この絵はまた、額に入れて飾っておいて下さい。
きっと絵も喜びますよ。





・・・・よく理解出来ない様ですね。
そうですね・・・簡単に言えば・・・・
私はヨエルの絵そのものではなくて
ヨエルの絵に宿る、魂の様な物です。
だから用が済めば、またヨエルの元へ戻るのです。
ただの絵になる絵ですが・・・・
ヨエルの大事な想いのつまった絵ですから
どうか大切にしてやって下さい。







それでは、また会う日まで、ご主人。


















Fin

 
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2011/07/08 絵描きのヨエル Trackback() Comment(0)

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