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2017/12/13

語り屋と君:夢を見る犬②

あっははは!面白かったぁ・・






そんなに笑うな、って?
それは無理な注文だろう?
だって・・・・君ったら・・・・・
あ・・あははははっ!!
だめだ、笑いが止まらないよっ!!






あ、あれ?拗ねちゃった?
ねぇ、そんなに怒らないで。
悪気は無いんだよ、ごめんね?
なんだか楽しくってさ!
ちょっと調子に乗りすぎちゃったみたいだ。






彼も嬉しそうにしていたし
君さえ良ければ、また彼と3人で散歩でもしようよ。
今度はそうだなぁ・・・・
青い猫の広場のキャンディショップがやってる時間に。
彼ね、あそこのハニーマカロンが
大のお気に入りなんだ。
3人でマカロンかじりながら散歩・・・
素敵でしょう?






ふふふ、よし!
じゃあさっきのお話の続きを話そう。
ついさっきの事だから
お話は覚えているかな?





さぁ、脳みそを空っぽにして
君のキャンパスを真っ白にしてね。




















*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,.








夢を見る犬







「さ、もう眠ろうよ!おやすみ、ディディエ」








 

空元気を出して、そう言う彼。
ディディエは彼の傍に座ったまま、彼の事をじっと見たままだ。
その視線を感じていたけれど、彼はそのまま無理やり目を閉じた。
あんなに毎日、眠りたいって思ったのに・・・
どうしてだか眠れそうな気分じゃなかった。

 










「ねぇ、君・・・・もしかして絵描きになりたいのですか?」









 






次に口火を切ったのはディディエだった。
ディディエも緊張していたのか、声が思いの他裏返って
その事がきっかけでディディエも自分が緊張している事を自覚した。
彼もまた・・・”あぁ来てしまった”と思った。
二人が恐れていた結果・・・
それが今日この時”訪れてしまうんだ”と思ったから。

 

 




 

 

「そ、そんな訳ないだろ?俺犬だし・・・・」

 

 







 


必死に否定するけれど、彼の声もまた裏返っていた。
心の動揺が隠せない・・・どんなに否定しようとも。
それはディディエにもすぐに伝わっていた。
だけど、ディディエは少し考える素振りを見せる。
顎に手を置いて、彼をじっと見つめながら。

 











 

「そんな馬鹿な犬じゃないよ?俺・・・
こんな手じゃ筆も握れない・・・そんな事、知ってるって!」

 










 

なんとか繕おうとするけど、自分で口に出すと一気に胸が痛んだ。
解っていた事なのに・・・・どうしてだか目から水が毀れる。
その水が彼の高い鼻を辿って、鼻の穴に入るので煩わしい。
だから頭をブルブルと震わせて、その水を振るい落とすけど
一旦流れ出した水は、どんどん目から毀れてきた。











 

 

「あぁ・・・もう!腹立つな!」










 


その水が鼻に入ると、ひどく息苦しかったので何回も頭を振ったけど
また次から出てくるもんだから、どんどん彼は苛立った。
だけどやればやるほど、苛立てば苛立つほど水は目から流れて
ついには大声を出して立ち上がってしまった。

 










「うわっ!ど、どうしたんです、急に!
危ないでしょう!?」

 











彼の体にもたれて座っていたディディエは大慌て。
思わず畳んだ羽を広げて宙を舞ったけど
ひとつ間違えれば彼の体に、強く自分の体を打ち付けていただろう。
だからディディエは怒ったけど、肝心の彼は立ったままで黙っていた。
様子がおかしいのは明らかで、ディディエも慌てた。








 


「アロー・・・?君、大丈夫です・・・か?」

 

 












宙を舞ったディディエは、そのまま彼の向く方向に回りこむと
腫れ物のに触れるみたいに声を掛けた。
そこでようやく、彼が涙を流している事に気付いて
ディディエは言葉を失った。

 







 

「ねぇ・・・なんだか俺、壊れちゃったみたい。
何しても水が流れてくるんだ・・・・
おかしくなったのかな、俺・・・・」







 




彼は笑ってみせる。
ディディエの驚いた顔を見て、彼は必死に笑った。
嫌われたくない、馬鹿な犬だって嫌われたくない。
だから必死に笑ったけれど、水は絶え間なく流れてきた。










 

「ねぇ、ディディエ。
そんな所に居たら危ないぞ?
・・・こんな水に当たったら、ディディエ・・・溺れちゃうぞ」





 




彼はおどけても見せた。
ディディエに悟られて、馬鹿な犬である自分を見られたくないから。
だけどディディエは彼のジョークを聞いたって、笑顔を見せなかった。

 






 

「ねぇ、ディディエ・・・お願いだ。
笑って?俺みたいな馬鹿な犬・・・笑ってくれていいんだ。
そんな手で・・・そんな不器用な手でどうやって筆を握る気だ?って笑ってくれよ・・・
俺は馬鹿だって、そんな夢見たってどうせ・・・どうせ叶わないんだからって・・・
笑ってよ・・・・笑って・・・・・ディディエ・・・」







違う、本当は”言わないで”
笑わないで、どうか夢を否定しないで。
ディディエは彼にとって掛け替えない存在だから
ディディエにだけは・・・そう言われたくない。










 

彼は恐れている、ディディエにそうやって笑われて、嫌われてしまう事を。
だからこそ、もういっその事・・・苦しみから逃げたかった。
恐れるのにも、隠すのにも、空虚の夢の世界にも・・・疲れていたのかも知れない。
だって、いつまで続けられる?こんな虚構を。
夢の中の世界は現実じゃない。
最初は幸せだったけど
すぐに気付いてしまった。









こんなのただの生殺しだ、って。

 











「笑いませんよ・・・・私は。」

 









ディディエもまた、こんな苦悩の日々は終わらせたかった。
自分も辛かったけど、彼は涙を流すほどに辛かったと知ったから。
だって、そうでしょう?
彼の言う通り、犬の手じゃ筆を握れない。
叶わない夢を持っていて、それを誰にも打ち明けられない。
例え、愛し合って信頼しあっている者だったとしても。
そんな体験をディディエはした事がなかったけど
だからこそ、彼の痛みが理解出来た。

 










「ねぇ、君。・・・私は君の夢を笑ったり出来ません。
素敵な夢です・・・さすが私の君ですよ。」

 




「え・・・?」

 









ディディエは彼の鼻先に近寄って、顔をこすりつけながら言った。
彼は心底驚いた顔をしていたけど・・・それを見てディディエは安堵した。
彼の心が悲しみに飲まれる前に、ディディエの元に戻ってきた気がしたから。
作られた笑みなんかより、驚いて目をひん剥く彼の顔が可愛かったから。












 


「なんで・・・・馬鹿だと思わないの・・・・?
俺、絶対叶えられない夢を見てるんだよ?
だから馬鹿みたいに毎日眠って、いっぱい眠って・・・
時々目を覚ましたくないって思う程眠ってさ・・・
ディディエとの約束も忘れちゃうしさ
友達の事だって忘れちゃったしさ・・・なのに・・・」










 

 

「馬鹿だと・・・思いますよ。
私に相談も無しで、勝手に思い悩んで・・・
夢を掴む事を諦めて・・・眠った後の世界に逃げた君は馬鹿です。
だけど・・・君は私の愛しい子に、変わりありません。」

 








ディディエは彼を抱き締めた。
彼の方が何倍も大きくて、全然腕の長さは足りないけど・・・
それでもディディエは彼をおもいきり抱き締めた。
彼が生まれ落ちた日も、初めてヨチヨチ歩いた日も
一人では寂しいとベッドから逃げた日も
知らないどこかの犬に恋をした日も
こうやって彼を抱き締めた。
どんどん体は大きくなってしまったけど
中身はなんにも変わらない
ディディエの愛しい子を、こうやって。











彼は目を見開いて、ひどく驚いていた・・・・
ディディエの言葉にも、そしてこの行動にも。
てっきり笑われると・・嫌われてしまうと思っていたから。
だけど、ディディエの小さな体は大きかった。
昔からずっと、いつも大きくて・・・・
なんだか小さい頃の事を思い出して、心がじわっと熱くなった。

 










「ディディエ・・・」











 


彼は掠れた声でそう言った。
胸が一杯で、何も言えなかった。
言いたい事はたくさんあったけど、何一つ言えなかったのさ。
ディディエだって、そんな彼の気持ちは解っている。
だから彼の体からまた離れて、今度はりんごの様な丸くて可愛い頭を撫でる。

 









「ねぇ、君。
私にも・・・その君の素敵な夢を分けてくれませんか?」

 














「え・・・・?」

 






 

ディディエの言葉に呆気に取られた彼が、間抜けな声を出す。
彼はまったく意味が解っていない。
だからディディエはそんな彼を見て思わず笑ってしまう。

 










ディディエにはある案が思い浮かんでいた。
彼が夢を叶えたくて、でも叶えられなくて・・・そんな事実に苦しんで
自分に対しても打ち明けられなかった、苦しい胸のうちを見たあの瞬間から。
ディディエは彼の夢を叶えられる、唯一の手段を思いついていたんだ。

 












「私はね、生まれてもう、長い間生きているけど
お前程、大事に思った子は居なかったのですよ。
もういい歳だから・・・夢なんてものは考えませんでした。
だけど、今この瞬間、君の夢を叶えてやりたい・・
そんな夢を見つけたんです。」











 


「ディディエ・・・でも・・・そんな事出来るの?」








 


「えぇ、可能ですよ。私は妖精ですから。
ただし・・・お日様の出ている間か、お月様が出ている間・・・
そのどちらかでしか、叶えてやる事は出来ません。」

 








「どちらかなら・・・俺は絵を描ける様になるの!?」










 

興奮した彼が思わず大きな声をあげる。
ディディエは面白そうに笑っていたけど、彼は少し恥ずかしそうに目を伏せた。

 











「妖精・・・もしかして人間に・・・なれたりするの?」

 










「えぇ、人間に体を変える事が出来ます。
しかし・・・・・そうですね・・・・生計は自分で立てなければなりません」

 









「え?なんで・・・・?」

 








 

「それが条件・・・・なのですよ。
私の知り合いの牧場を紹介しましょう。
犬の君なら、牛を追うのは得意でしょう?」









 


「うん、俺牛を追うの好き!前に友達の勤め先でやったけど
あれはすごく面白かった!人間は褒めてくれるし、さ!」











 

ディディエは彼の答えを聞いて、心底穏やかな気持ちになった。
・・・これで、自分が原型を留められなくっても
彼は夢と共に生きていけるって・・・・そう安堵した。

 









・・・・そう、ディディエは魔法使いじゃない。
だから彼を人間にするには・・・代償が必要だった。
もちろんその代償は・・・ディディエの命。

 











死ぬ訳ではないけれど・・・伝承によれば妖精の姿は保てなくなる。
そうすれば、彼は食い扶持が無くなってしまう。
不安だったのはその事だけだった。
だけどその問題も今、まさに今クリアしたんだ。
だからディディエは心底穏やかな気持ちで微笑むんだ。

 










「じゃあ、君。
私に約束して下さい。
どんなに下手でも、描くことを忘れないと。
夢を諦めたり、夢を見た自分を貶したりしないと。
そして・・君はいつも私と一緒に居ると・・・・」

 







 

ディディエは最期のお別れに、こんな言葉を彼にかけた。
彼の胸は長年夢に見て、そして諦めた夢を叶えられる事実で精一杯だ。
ニコニコとひまわりの様に笑って、ディディエに鼻をこすりつける。








 

 

「あぁ!絶対に守るよ!ディディエ!」








 







ディディエはそんな彼の無邪気な言葉に涙を溢した。
自分が生まれてきた理由、彼と同じ家で暮らした理由があるならば
今この時のためだったんじゃないかと思うくらい充実していた。









 

 

「どうしたの?ディディエ・・・俺と同じ、水が垂れてる」






 






涙を流さない犬の彼には、涙が解らなかった。
だからすっ呆けた事を言って、またディディエを笑わせる。







 


「これは涙というのです。
人間は嬉しい時に流すのです。
解りましたか?君は明日の朝か、夜には人間に変わるのですから
しっかりと覚えておきなさい。」

 











涙を流しながらディディエは彼をベッドに横たわるよう促す。
この夜が明けたら、ディディエは体を失くしてしまう。
魂だけがその場をウロウロする・・・・どこにも行けなくなってしまう。
彼ともきっと、もう話せなくなる事も自覚している。
だけど・・・悟られる訳にはいかないから、無理して笑顔を作ってる。
昨日の夜にそうした様に、眠らない枕を彼の体に立てかけて。

 











「人間って大変・・・俺、楽しみ!
人間になったらさ、すぐにさ、筆を買いに行くよ。
紙は・・・この家のを使って良いでしょ?
練習だから・・・ナプキンにでも描こうかな?
一番初めはディディエがモデルになってね!」

 









彼はディディエに言われた通りに目を瞑って、頭を伏せた。
いつもの眠りに誘われる時のポーズ。
そのままで、いつもの様に脇腹に眠るディディエに話かける。
モデルを願い出る彼の言葉への返答は・・・出来ない。
だから彼をからかう様にして笑ってみせる。







 


「ふふ・・・君は性急ですね。
墨を買うのも忘れてはいけないですよ?」









 

「解ってるよぉ、そんな事・・・
・・・・ディディエって・・・・本当に心配性・・・・だ。」










「私の可愛い君の事ですからね。
心配にもなりますよ。」








 

そうだ、心配だ。
いきなり人間になって、苦労はしないかな?
絵なんて簡単に描ける物じゃない、挫折したりしないかな?
ご飯はちゃんと・・・一人で用意出来るかな?
彼は犬の中では中型だから、服はどのサイズがいいかな?
それ以前にボタンは・・・留められるかな?
犬の間の変な癖を隠せるかな?
ディディエが見えないと・・・パニックを起こさないかな?

 








 

「もう・・・・ディディエの・・・・ば・・・・か・・・・
ぶさ・・・いく、に・・・・描・・いちゃ・・・う・・・ぞ」

 







 

彼の言葉が途切れ途切れになると、ディディエはすぐに解る。
こんな会話の20秒後には、彼はすっかり夢の世界に居る事を。
だからディディエは起き上がると、羽を使って宙を舞い
彼の鼻先に顔をこすりつける。

 









「私の可愛い君、君の夢への強い気持ち・・・信じているよ。」





 





そう一言、眠る彼の穏やかで幸せそうな顔に呟くと
彼は窓を開けて、夜の真っ暗な空へ飛んでいく。
妖精の羽が、月の光に照らされて
その姿はとっても美しい光景だった。






彼は何色が好きだったんだろう?
絵の話を避けていたみたいだから、解らない・・・
だったら彼の好きだった、ひまわりの花の色にしよう。
人間になった彼は・・・どんな髪色で、どんな顔立ちだろう?
・・・きっと彼は元気いっぱいのやんちゃな子だろう。
ひまわりの様な笑顔が、とってもチャーミングだろう。







彼の処女作は何がモデルになるだろう?
自分は見えないから・・・きっと、シェパードドッグだろう。
もしかしたら・・・ひまわり畑かも知れないけど。





ディディエは彼の旅立ちの為に飛んでいく。
妖精としての最期が、大切な彼の夢を叶える事で
本当に良かった、そう安堵しながら。












 

 


*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,.

 

 

 

さぁ、この話はここで一旦終了だよ。

 

今回のお話はどうだった?
とっても良いお話だったでしょう?

 

 

え、どこかで聞いた事のある設定だった・・・って・・
あれ・・・?もしかして君・・・
この犬の事を知っているのかい?

 

 


そう!ヨエルのお話だよ!!
君がヨエルに会っていたなんて・・・驚いたなぁ・・・!
あ、そんな所に僕の絵が・・・・まったく気付かなかった・・・。
彼、この後色んな事があったけど、今は夢を叶えてるんだ!
ふふふ、そうだろう?本当に良く頑張ったもんさ。

 





あれ・・・でもこれじゃあルールに違反しているね。
君が描く為の空白が無くなっちゃった。
うーん、事前に君に聞いておけばよかったなぁ・・・・。
語り屋失格だなぁ・・・僕。

 












え?・・・・・・ふむ・・・・・あ、そっか。
この物語から、夢を叶えるまでのストーリーは話していないもんね。
そこを君が描けばいいのか・・・・うん、君って冴えてるね!








そう、この後ディディエはどうなったのか。
そして彼はどう思ったのか。
それは君が考えてあげて、ね。

 







じゃあ僕、約束があるからこの辺で。
いつもの様に、君にメッセージを送るよ。










夢は見るものじゃない、叶える物だ。
この世に溢れてる言葉だけど、本当にそうなんだ。
ヨエルの様に、魔法みたいな事は起きないけれど
それに近い力を君たちは持っているでしょう?
それは・・・・努力だよ。
無理、なんて諦めちゃったらそこまでだけど
努力をしてみたら、なんか気持ちがいいだろう?
夢は叶うか叶わないかじゃない。
叶える為に努力できるか、そうでないか・・・それが重要なんだ。
君の夢は何?・・・その為に出来る努力はしているかい?
花は種が無いと・・・絶対に咲きはしないんだよ。
それをよく、覚えていてね。

 






 

祈りを込めて、語り屋より。












君も素敵な夢を見れますように。



















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2011/07/11 語り屋と君 Trackback(0) Comment(0)

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