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2017/11/24

記録師とあなた:不思議な青年と変わった少年


コンコン・・・・
こんにちは、記録師ですが・・いらっしゃいますか?

 

 

 

 

あ、良かった。いらっしゃったのですね。
ハロー、ご機嫌はいかがですか?

 

 

 

そう、それは良かった。
久しぶりですね、あなたの家をこうやって訪れるのは。
うふふ・・・・元気そうで、私も嬉しいですよ。
今日は語り屋が家に帰っているもので、私も休日にしたんです。
だったらあなたに、この間の続きをお話しようと思いまして。

 

 

 


あぁ、お気遣いは不要ですよ。
こうやって、話を聞いてくれるだけで良いのです。
さぁ、あなたはそこの椅子に腰を掛けて。
私の記録した、彼のお話を聞いてください。

 

 

 

 


今日も私が記録した”語り屋”自身の物語を話しましょう。
彼が決して語る事のない、彼自身が主人公のお話です。
ふふふ、興味が湧いてきた様ですね。
では・・・お話を始めるとしましょう。

 

 

 

 

それは、もう随分と昔・・・・
ある不思議な出来事に出会った語り屋と、その出来事の主人公とのお話。
お話の舞台は、鬱蒼と草が茂る森の中です。

 

 

 

 


*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,.

 

 

不思議な青年と変わった少年

 

 

森を抜けて、あの街に戻ろう。
少年は泣き腫らした目を乱暴に擦って、大きく溜め息を吐いた。
耳を澄ませば泉で生命が息吹く音が、コポコポと聞こえる。
少年はその音を耳で確かめて、少しだけ微笑んだ。

 

 

 

「大丈夫、僕はもう・・・・・平気だ」

 

 

 

自分に言い聞かせる様に呟くと、そっと地面を踏み込む。
遠くで教会の鐘が鳴り止んで、それと同時に子供のはしゃぐ声が聞こえる。
少年はその声を聞いて、少しだけ不安に駆られる。
だけどもすぐに頭を振って、そんな不安を払い捨てようとする。

 

 

 

 

「大丈夫、僕は神様に二度・・・・命を授かったんだから」

 

 

 

呟く言葉は、己への啓示。
神が間違いを冒してまで救おうとしてくれた、己への戒め。
だから自分自身で強くなり、自分で居場所を見つけなければ・・・
少年はそんな風に決心を固めて、一歩一歩街への帰路を踏む。

 

 

 


「ねぇ、奇跡の子。街に戻ってしまうのかい?」

 

 

 


ふと、そんな声が聞こえた気がした。
こんな暮れの時間に、こんな危険な森の中で。
咄嗟に声の主を探して辺りを見回すが、森に変わった様子はない。

 

 

 

 

 

「あはっ、ここだよここ。」

 

 

 


そんな滑稽な少年の姿を見て、声の主は可笑しそうに笑うと
少年の頭上から大きな花を落とした。
足元に舞い降りるその花は、少年の世界に咲く花とは異なった色合いの綺麗な花。
足元に落ちた花を拾うと、少年は花が降りてきた先を見上げる。
そこには何がそんなに可笑しいのか、満面の笑みを浮かべた青年が
大きな木の枝に座り、宙に投げ出した足をパタパタと動かしていた。

 

 

 


「あなた・・・・誰?」

 

 

 

少年が訝しげに目を細めてそう問うと、青年は少し眉を下げて笑った。

 

 

 

「うーん・・・困ったな。僕には名前がないから
何て答えればいいか解らないよ。」

 

 

 

青年の言葉は、驚くほどに口軽い物だ。
だけども少年は、何故か少しも疑ったりはしなかった。
何故だかは解らないけど、青年が嘘をついているとは思わなかった。

 

 

 

 

「それならしょうがないね。」

 

 


「あれ?驚かないのかい?」

 

 


あっさりした少年の言葉が意外だったのか、青年は目を丸めて少年に問う。
少年もまた、青年がそんな風に聞き返す事をイメージしていなかったもんだから
少しだけ頭で考えて、ゆっくりと口を開いてみせる。

 

 

 

 


「僕が・・・他人に”何故、そんなに真っ白なの?何故、瞳の色が左右非対称なの?”
そう聞かれても答えられないのと一緒・・・・だと思ったから。
だから驚いたりはしないよ。」

 

 

 


少年はそう言って、少しだけ笑みを溢す。
青年はそんな少年の言葉に、また同じく笑って見せた。
ポケットに詰めた大輪の花を、もう一輪手に取ると
一生懸命に頭上を見上げる少年に言った。

 

 

 

 


「ねぇ、奇跡の子。君は名前・・・・あるのかな?」

 

 

 

 

「うん、あるよ。ピピンって言うんだ。」

 

 

 

 


ピピンと名乗った少年は、とっても穏やかな気分だった。
理由は実に単純な事。
生まれて初めて、同じ人間と会話をしたから。
怖がられる事もなく、罵られる事もなく、青年はピピンと話してくれたから。
だから自然と笑みが零れて、もっと青年と話をしたくなった。

 

 

 

 

 

「ピピン・・・・ピピンって名前は”どの事”を言うの?」

 

 

 

 

 


青年は身軽な動作で枝から地上に飛び降りると
ピピンの名前を何度か繰り返し、不思議そうに言う。
あまりに勢いよく飛び降りてきたもんだから
ピピンは少し驚いた様子を見せたけど
突飛な彼の言葉に笑って答える。

 

 

 

 

 

 

「古い外国語・・・忍耐強いって意味があるよ。」

 

 

 

 

 

「へぇ!それは君にぴったりだ!」

 

 

 

 

 


青年は嬉しそうに、ピピンの頭を撫でながら言った。
初体面の相手に対して、少し馴れ馴れしい態度だけれど
ピピンはひとつも嫌だと感じなかった。
こうやって頭を誰かに撫でられたのも、初めてだったから。
他人の肌が持つ、温かい温度に初めて触れて・・・とても安心していたから。

 

 

 

 

「じゃあさ、君をピッピって呼ぶよ。
これは僕だけが呼べる名前だ。
親愛なる君を、僕だけの名前で呼びたいんだ。」

 

 

 


「え・・・?親愛なるって、あなたは僕を知らないじゃない。」

 

 

 


青年が発した言葉に、さすがのピピンも耳を疑った。
今日は何かがおかしいんじゃないか、と思った。
先程は神様に出会って、命を救われた。
そして今度は不思議な青年に、突然”親愛なる君”なんて呼ばれて。
数時間前まで、他人に疎まれて小石をぶつけられて、死にかけていた自分が、だ。
お腹を痛めて生んだ親にすら、怯えられていた自分が、だ。
だから青年の目を見て、否定的な言葉を投げつける。

 

 

 

「知ってるよ。もし、知らなかったとしても・・・僕は君が好き。
だから、神様が君を行かせても・・・
僕はもっと素敵な場所を君に見つけさせてあげたいって思ったんだ。」

 

 


神様、と青年が口にした瞬間・・・・ピピンは悟った。
真っ白な肌、真っ白な髪、左右で色の違う瞳
そんな変わった容姿のピピンに驚かなかったのも
初めの一言に”奇跡の子”と呼んだのも
この青年が少なからず・・・・ピピンと神様の対話を目にしていた事を証明していた。
だから少しだけ、気分が悪くなった。

 

 


「ずっと見てたの?その木の上で・・・」

 

 


「うん、見てた。覗き見は良くないよね。
・・・・だけど、ピピンから目が離せなくってさ。」

 

 

 

「目が離せない?・・・僕が珍しいから?」

 

 


「ううん、君が素敵だったから。」

 

 

どんどん暗くなる森の中で、さざ波の様に木の葉が揺れる。
ピピンの心にすらも、波を立てるように流れていく。
ドキン・・・ドキン・・・ハートの音が大きくなっていて、ピピンは慌てた。
神様に抱き締められた時とは違う、その感覚に少し恐れた。
覗き見をされるのは嫌だったけど、何故それを嫌だと思うかと考えれば
明確な理由、正当な理由が見当たらない。
だからピピンはしょうがなく、青年に向けて笑って見せた。

 

 


「あなたって、変わっているんだね。」

 

 


「ピピン、僕の世界では何もないのが”当たり前”だったんだ。
だから僕からしたら、この世は変わった物ばかりさ。
変わっている事が悪なら、この世は全て悪だよ。」

 

 

 


苦笑するピピンの小さな頭を、少し乱暴に撫でる青年。
ピピンは彼の言った言葉の意味を図りかねたけど
そんな事を彼に言っても、きっと”まともな答え”は聞けないと思った。
彼は、自分が生きるこの世界の、どのルールにも当てはまらないんだろう、と
そう思ったら突然、そんな事はどうでもいい、と思えた。

 

 


「そっか・・・うん、そうなのかも。
僕だって、この世界のルールに反した姿だから・・・
あなたが変わっていても、なんとも思わないよ。」

 

 


「そうだろう?何かが違っても、僕らは何も違わないよ。
ねぇ、ピピンはこれからお家に帰るのかい?
何も残した物がなければ・・・僕と一緒に旅をしないかい?」

 

 

 


「え・・・・?旅って?」

 

 

 

不思議な青年の口振りは、驚くほど軽いもの。
だけども言っている事の意味は”驚くほど重い事”
ピピンは思わず目を白黒させてしまう。

 

 

 


「僕はね、自分にぴったりな名前を探して旅してるんだ。
もう・・・・そうだなぁ・・・自分でも、どの位時間が経ったか解らないくらい。
色んな世界をうろついて旅をしながら、色んな事を見たり学んだりしてる。」

 

 

 

少し肌寒くなってきた、翳りの中の森。
青年は目を細めながら、戸惑うピピンをお構いなしに話を続ける。
雷に打たれて根元から折れた木の幹。
自然が作った椅子に腰を掛けながら、青年は頭をゆったりと右へ左と揺らしている。
何故だか森が喜んでいる様な気さえする。
彼がここで喋るたびに、森がざわっと騒いで、笑っているみたいだ。

 

 

 


「ピピンは知っているかい?
人ってね、感動するにも悲しむにも頭の中にある”脳”を使うんだ。
人ってね、不思議とハートがそれをしてるって思い込んでいるけど・・・
ハートが震えたり、縮こまったり、激しく動いたりする為には”ココ”を必要とするんだ。」

 

 


ピピンも青年の横に足を折りたたんで、青年の話を懸命に聞いていた。
問い掛けるようにして話す青年は、横のピピンを伺うようにして
自分の頭をツンツンと突付いてみせる。
だからピピンはそんな彼の言葉に、少し眉を顰めて応えてみせる。

 

 


「でも・・・感情はハートが作り出す物じゃないの?」

 

 


すると青年はニコッと笑顔を見せると、大きく首を横に振ってみせる。
気付けば辺りは暗闇に包まれようとしてる。
なのに彼の周りには、いつしか森の住人達が集まってきていた。
もう世の中は眠りにつく時間だっていうのに
まるで青年の話を聞きにやってきたみたいに、お行儀よく皆座っていた。

 

 

 

「ノン、そうじゃないよ。
”ココ”が生きたいと願う体のシグナルを、絶えずに送ってハートが動く。
感情だってそのひとつさ。
”ココ”が”それ”を残しておくために記憶する、その時の反動でハートが震える。
するとそのハートの微震をまた”ココ”が僕らにシグナルとして送る・・・・それが感情さ。
だから人の脳はとっても大事、いくつもの記憶とそれをシグナルにする役目。
それに君が今生きているのも奴の役目のひとつ。
わかるかい?」

 

 

 

「うーん・・・・・要は脳が僕の全てを動かしてくれてるって事?」

 

 

 

「うん、そういう事だね。
もちろんそれは、ここに住まうこの可愛い子達も同じ。
君が座っている木だって、そこの小さくて可憐な花だって同じ。
脳でなくても、何かがそれの代わりをしっかりやってるんだ。」

 

 


ピピンは夢中で彼の”不思議な言葉”に耳を傾けていた。
もちろんそれは、いつの間にやら集まった動物達も同じだ。
ピピンが住む世界で言われている、偉い人が解明した人体の話しとは逸脱した
彼の独特な解釈で語られる”不思議な言葉”に皆が夢中だった。

 

 

 


「それと・・・僕を旅に誘った接点は?」

 

 

 

「うん”ココ”はたくさんの役目があるのにさ
僕の旅は刺激的過ぎちゃうんだよ。
新しい事が多すぎて、覚えておきたい物が多すぎて
時々僕の中から大事だった物を持って行っちゃうんだ。
それが何だったか、それすらも忘れちゃって大変なんだよ。
だから僕の事を代わりに、覚えていてくれる相棒が欲しくって。」

 

 

 


「忘れちゃうの?大事な事って・・・・?」

 

 

 

 

「うーん・・・・例えばこの間、ママとの約束を忘れた。
だからママに約束を確認しに帰ろうと思ったけど、途中で家までのルートも忘れた。
その前は旅の目的を忘れちゃったし、もっと前にはズボンを履き忘れた。
ご飯を食べる事はしょっちゅう忘れるし、お腹も空いた事を忘れちゃうし。」

 

 

 


「え!?そんなに忘れちゃうの!?それはいけないよ!」

 

 

 


「あはははっ、そうだろう?僕って本当忘れっぽくて。
だけど、僕はね・・・自分が知らない世界を見て居たいんだ。
・・・・それが僕にとって、あまり良くない事でも止めたくない。
・・・・だから、ピッピに手伝ってもらいたいんだ。
僕が忘れても良い様に、君が僕の事を記憶していって欲しい。」

 

 


青年は、ピピンの小さな手をそっと握って笑った。
ピピンはそれこそ、こんな風に他人から求められる事が初めてで
どんな風に答えるのが適当かを必死に考えていた。
どんなに辛い事しかなくっても、ここはピピンの生まれ故郷だ。
見知った土地を離れ、見知らぬ相手と旅をするなんて・・・やっぱりそれは怖い。
だけど街に帰ったって、森から抜けた次の瞬間・・・殺されるかも知れない。
・・・・・・・・・簡単には、答えが出せない。
一生懸命考えて、脳がシグナルをだしてハートが脈を早める。
それを感情だと感じる事が出来なくてピピンは頭が痛くなる。
喜び?不安?期待?恐怖?だけど全部そうであって、ひとつには絞れない。

 

 


戸惑うピピンを見つめたまんま、青年はただ柔らかく微笑むだけ。
肩を伝って降りてきた、可愛いリスを指先で突付いて遊びながら、ゆっくり時を楽しんでいる。
ピピンはそんな彼を見ながら、まだ頭を悩ませた。
一緒に行きたい・・・こんな自分が彼の力になれるなら、なってあげたい。
だけど・・・・こんなに優しい他人を前にして、どうしても拭えない気持ちがあった。
ピピンは楽しげに微笑む青年のシャツを、片手で少しだけ握って引っ張ると
目線を地面に向けたまま、少し震えながら言った。

 

 

 

「ココを離れたら・・・僕は貴方に頼ってしまうよ。
今みたいに、貴方が拒まない事を”心地良い”と感じてしまうよ。
貴方は良い人、だから力になりたいけれど
・・・そんなの逃げているみたいで、凄く嫌だな・・・・。」

 

 


青年はまるで鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔をした。
ずっと下がりっぱなしだった目尻から、長い睫が飛び出すくらいに。
地面と睨めっこしたままのピピンは、そんな彼の様子を見ていないけれど。
彼はキョロっと丸めた目を、少し上に向けながら”うーん”と少し唸った。
だけど少し時間が経った後、やっぱりさっきまでの様にニコっと楽しげに笑ってみせる。

 

 

 

「逃げちゃいけないのかい?
いいじゃないか、君が必要とされる場所に縋っても。
僕だってこうやって、君に縋っているんだし。」

 

 


「貴方は縋ってなんか居ないでしょ?・・・・故郷を離れて、一人旅をしてるじゃない。
僕を誘ってくれたのも、慈悲の心がそうさせているんだよ。」

 

 

 

「可笑しいな、ピッピは。
僕は間違いなく、君に縋っているんだよ。
慈悲でこんなおかしな事は言えないよ。
これは僕の願いなのだから。」

 

 

 


「何故願うの?僕とは初対面だろう?」

 

 

 

 

「好きだから、だよ」

 

 

 


二人の会話を森が耳を澄まして聞いている様に、辺りは急に静かになった。
ピピンは必死に彼の真意を探ろうとしたけれど
青年が言う言葉はふわっと空を飛び立って、瞬間で逃げてしまう様だった。
だけど彼が求めてくれている事を、ピピンの脳がしっかり”喜び”としてシグナルを出している。
ハートがトクントクンと早歩きになって、体が勝手に踊り出しそうだった。
”好き”そんな風に言われる事が、こんなに幸福な事だったなんて。
ピピンは青年のシャツを掴んだ手を、よりいっそう強く握り締めた。
そうしていないと、手放した風船の様に自分が飛んで行ってしまいそうだった。

 

 

 

 


「ココに居たら、君はただの”異形の子”
だけど世界を飛び出して御覧?きっとそんな事、どうでも良くなってしまうよ。
僕の世界じゃ月は真っ赤だし、森は真っ黒。
僕の腕で遊んでいるリスだって、僕の世界じゃ二足歩行して歩いてた。
自分の世界に無い物を見れば、簡単にひっくり返ってしまう物なんだよ、人の作り出した世界って物はさ。
だから、せっかく生まれてきたんだ。もっと君は世界を見るべきだよ。」

 

 

 


青年は腕で遊んでいたリスをそっと地面に降ろすと、ピピンを優しく抱き締めた。
太陽が木の葉を照らして、それが葉と葉の間から漏れる時
優しく穏やかに地面を射す、その淡い光の様な微笑みを湛えて。
辺りはすっかり眠りの時間、草も木も人も眠ってしまう暗い時間。
だけど不思議な光が、二人の間を包んでいる様に温かい。
そんな二人の様子を見て、森の動物が笑う様に見ていた。

 

 

 

「僕は貴方の役に立てる?僕は・・・一緒に行ってもいいの?」

 

 

「あぁ、大歓迎さ!じゃないと、ママに怒られっぱなしで大変だよ。
だから・・・・・僕の元に舞い降りた幸運に感謝してる。」

 

 

「・・・忘れちゃう貴方だって良くないよ。
ママに愛されているなら、しっかりと覚えていなきゃ。」

 

 

 

「あはは!そうだね、愛されてる。
まだ僕を赤ん坊だと思ってるんじゃないか、って疑いたくなる位に、ね。
だけど・・・僕ってピッピの様に優しい奴じゃないのさ。
何て言うか、自分に甘い性格で、誘惑にも弱いんだ。
愛されている事さえ忘れちゃうかも知れないから、ピッピは大忙しだよ?」

 

 

 


「・・・・・あっははは!何だよそれ、貴方それって酷すぎるよ?
もう、仕方ない大人だなぁ・・・・貴方って人は。」

 

 

 


ピピンはそう言って、彼の腕の中で思いっきり声をあげて笑った。
胸に詰まったモヤモヤがすーっと音も無く消えて行って、心底愉快だった。
青年が口にする言葉が、あまりにも馬鹿げていて・・・・それでいて羨ましかった。
だから答える代わりに掴んだシャツをギュウっと握った。
この体が、喜びの余りに宙を舞ってしまわない様に。
そんなピピンのシグナルは、きっと彼にも伝わっていた。
ピピンも彼も、何も言葉を発さなかったけれど間違いない。
・・・・とびっきりの笑顔と、森にそぞろ帰っていく動物達がそれを証明していたから。

 

 

 


*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,..,:*:,.

 

 


今回のお話は、ここでおしまいです。
どうです?楽しんでいただけましたか?

 

 


あれ・・・あなた、私の名前を知っているのですか?
私は言った覚えが無かったのですが・・・。
あっ!あの絵・・・私・・・・ですね。
そうですか、あの絵師の子が言っていたんですか。

 

 


そうと知っていれば、名前は伏せてお話したのですが・・・・。
何と言うか・・・・自分の話を第三者として語るのは・・・
恥ずかしいものですね・・・・。
語り屋が自分の話をしない理由が、初めて身に沁みて理解出来ました。
・・・・そ、そんなに笑わないでいただきたいっ!
今にも顔から火を噴きそうです・・・・。

 

 

 

え?・・・あぁ、そうですよ。
こういった経緯を経て、私は彼と旅に出る事にしたのです。
勿論、不安が無かった訳ではありません。
だけど・・・どっちみち帰る場所なんて、私には無かったので。
どうせ死ぬなら、穏やかに包んでくれる相手の傍が良いと思ったのですよ。

 

 

 

・・・ふふふ、そんな傷付いた顔をしないで下さい。
実際、そう思って彼に付いて行ったから
こんな風に今ここで貴方と話しているのですから。
私は少なくとも、あの時・・・ネガティブな発想をしていて良かった、と思っています。
ふふふ、たまにはネガティブな考えも悪くないですよ?

 

 

 


さぁ、語り屋がまた気紛れにウロウロするかも知れない。
私は彼のところに戻りましょう。
あなたもゆっくりと休まれますよう・・・。

 


あ、そう言えば最近・・良からぬ噂を耳にしているのですが
あなたは被害に合われていませんか?
・・・・宵闇のバイオリニストの話ですよ。
ここ最近、青い猫の広場で闇の深い時間に
忽然と現れて興行を行っているらしいです。
そのバイオリニストの曲を聴くと、まるで狂った様に貪欲になるんだとか。
・・・・いえ、あくまでも噂であって、実害を耳にした訳ではありません。
だけど時々聞こえるんです、不思議な音色が。
・・・・語り屋も何かを察知しているみたいで、時々広場をうろついていますよ。

 

 

いえいえ、あまり気にされないほうが良いのかも知れません。
妄信的に恐れるのは、語り屋が嫌う行いのひとつですし、ね。
・・・だけど、備えは大事かと思います。
まだ見ぬ世界に、何が起こってもおかしな事はありません。
私に起こった出来事や、語り屋に会ってからのあなたの様に
言葉では説明のつかない事態は、すぐそこにあるかも知れないのですから。

 

 

 

それでは、私はそろそろお暇いたします。
この国は平和だけれど、用心にこしたことはありません。
しっかりと施錠し、穏やかな夜を過ごされます様に。
また、次の記録を持ってくるまで、暫くのさよならを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


fin....

 


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2011/07/27 記録師とあなた Trackback(0) Comment(0)

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