うーん・・・後はココをちょっと擦って・・・
シャカシャカシャカ・・
・・・・よしっ!完成っ!!
あれ?あっ、いらっしゃい!!
ナイスタイミング!あんたにあげる絵さ
えっへへ、今完成させたばっかりなんだ。
今日はあんたに会える気がしたから、さ
急いで仕上げてたんだよね。
うん?・・・・・あ、これ!!
そこのキャンディショップのコットンキャンディ?
うわぁ・・・ありがとう!!
早速食べたいんだけど・・・・・
うーん・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・。
あ、あのね・・・その・・・・。
は、恥ずかしいんだけど・・・そのぉ・・・・さ。
俺、まだあんまり手先が器用じゃなくって。
もし、あんたさえ良かったら・・・その・・・
パッケージを開けてくれないかな・・・。
えへへ、ありがとう!開けてくれて。
いっただきま~~す!!
・・・・・・・・・。
うん、甘くてサァっと溶けちゃって・・・美味しいや。
この色も可愛いよね、ひまわりみたいな色してる。
うん、俺が前に食べたのは空みたいな色してた。
味はソーダとかいう甘い飲み物の味だったけど・・
このキャンディは何の味なの?
・・・へぇ、これってレモン味って言うのかぁ。
あぁ、美味しかった・・・・!
あんたも約束を守ってくれたし
今度は俺がお礼をする番だね!
・・・あ、でも先に約束してくれない?
犬の俺を見ても、絶対に笑わないーって!
何でもいいから、絶対に笑わないって言って?
・・・・絶対、約束だからね?
・・・・・・・・・・・・・
じゃあ、見せるよ?あんたの事、信じたからね?
・・・・・・はい。これが犬の俺。
それと横のはディディエだよ。
え?可愛い・・・?あ、そっか。
人間は俺を見て可愛いって言うんだった。
えへへ、照れるなぁ・・・でも、うん。
犬の俺も、なかなか素敵でしょ?
足は短いけどさ、運動神経抜群だし!!
高い鼻はよく利くし、大きい耳は良く聞こえるし♪
それに犬の中では笑顔もチャーミングだと思わない?
ふふん♪そうだろ、そうだろー??
あ、ねぇ・・・言い忘れたんだけどさ
今回の絵は、ちょっとトラブルがあって喋れないんだ。
あー、うん・・・いつもの奴がその絵に入りたくないって言って。
何て言ったらいいか・・・理由は明確なんだけどぉ・・
それも言わない約束・・・なんだよねぇ・・・。
あんたには悪いけど、俺は口止めされてて、さ。
だからー!今回は俺が色々と教えてあげるよ?
さぁ、何が聞きたい??
俺のキュートさ?チャーミングポイント?
なーんでもいいよ♪
ええええ!!俺の事はもういいの!?
・・・・・・ディディエの方がいい?
なーんだ、つまんないなぁ。
まぁ、いいんだけどさぁ・・・・。
ディディエはね、森で木とか花の世話をする妖精なんだ。
うーん、具体的に言うと・・・・
森に木を植えたり、はだかんぼうの土地に草の種を蒔いたり
日照りが続くと水をやったり、遠くまで花粉を運んだり。
そう、すっごく大変・・・・嵐の日だって、彼らの為に
添え木をして回ったり、傷を癒してやったりするんだ。
だからディディエの植物が大好きでさ
家にはたくさんのお花が咲いてたよ。
季節ごとに色んな色のキレイな花があって
季節ごとに色んな虫が来るんだ。
そいつらが小さくて、チョコチョコ良く動くから・・・
俺、我慢できなくって良く追いかけて殺してた。
ディディエにはそれを叱られていたけど・・
体がどうしてもウズウズするんだよね。
うん?ディディエの性格・・・?
うーん・・・ディディエは真面目な妖精だよ。
妖精にも色んなタイプが居てさ
結構、適当にやってる奴も多いんだけど
ディディエは仕事に献身的だったし、サボる事も無かった。
見た目こんなんだけど、妖精の中ではかなりお爺ちゃんでさ!
細かい事にもイチイチうるさかったけど・・・
冷たい事言っても、どっか温かいんだよ。
なんて言うかな・・・優しさが滲み出てて、ほわんとしてる。
良い奴だし、大好きだけど・・・・几帳面なのは面倒だよ。
だって、いっつも俺に言うんだ。
”脱いだ物は洗濯しなさい”とか
”洗濯したら畳みなさい”とか
”泥だらけのままで家に入らない”とか。
でしょ?もう本当いちいちウルサイんだよねぇ。
・・・・・・・でも、だからディディエと一緒に居るのかも。
俺、まだまださ・・・・人間の体に慣れてなくて。
だけどディディエがいつも、色々注意してくれるし
俺がいつまでもダメだから、ディディエは傍に居てくれてる。
・・・・そんな気がするんだぁ。
・・・・え?ディディエは消えたんじゃないか、って?
あー・・・うん、消えたよ。
だけど魂だけはウロチョロしてるんだ。
姿がないから、最初はディディエも俺の事
黙って見守ってるだけだったみたいだけど。
俺が寂しくなって「ディディエ!」って呼びかけたら
応えてくれる様になったんだよ。
・・・そうだね、姿なんて重要じゃなかったのかも。
見えないけど、俺とディディエは今まで通りハグするし
不思議と少し温かい気もするし、さ。
繋がってるんだ、きっと。
なんていうんだろう・・・・
目に見えない、大事な物で結ばれてるんだ、きっと。
最初はさ、俺のせいでディディエが居なくなっちゃって
俺すっごい後悔したんだ・・・・。
夢の話さえしなければ、ディディエは傍に居たのに・・・って。
だから人間になった最初の夜も・・・
ディディエが教えてくれた”涙”を流すことで精一杯だった。
「嬉しい時に流すのが涙」だって、ディディエは言ってたのに
嬉しくないのに涙が出て、ディディエに怒ったよ。
嘘つきだって、毎晩泣いた。
でもね、毎晩ディディエが最後に言った言葉を思い出してた。
約束破ったら・・・ディディエ怖いんだ。
俺の毛を容赦なく引っ張ったりして、おしおきするから、さ。
・・・・だから、やっぱり描こうって思って。
俺のせいでディディエがこんな事になったんだから
俺がディディエの気持ちに応えなきゃ・・・嘘になっちゃうだろ?
それからは毎日、ディディエの絵を描いたよ。
俺の最初に描きたい物は、俺の頭の中のディディエだった。
目の前には練習用に、色んな花もあったし
ちょっと森を抜ければ大きな山だってあったし
かっこいいシェパードドッグとも友達になったんだけど・・・
それでも・・・やっぱり記憶を辿って
ディディエばっかり描いたんだ。
うん?うーん・・・・そうじゃないよ。
確かに恋しい気持ちはあったけど・・・・
目を開いた世界は真新しい物ばっかりで、さ
色んな事を覚えておきたいって思うだろう?
だけど俺の脳の大きさは変わらない。
・・・・不安だから、忘れないようにディディエを描くんだ。
覚えてる内に、ディディエを絵に閉じ込めたかったのかも。
ありがとう、あんたは良い奴だ。
だけど心配しないで?また家に帰る頃・・・
ディディエは迎えに来てくれるから。
姿は見えないけど、何も変わっていないからさ!
ううん、こちらこそ有難う。
あんたとこうやって話しをしていると
頑張らなきゃって思うし、絵が好きな自分を思いだせる!
上手く出来なくても、夢を叶える途中にいられる俺は
とっても幸せだって思えるんだ。
きっと、今の俺の様にさ・・・何年後かの自分が
”やっぱり俺はあの時、幸せだった”って言える気がする。
あはは!俺、言葉が下手だから、よく解んないかもね?
上手く伝えたいけど、俺にはこれが限界。
あ、ねぇ・・・そういえば・・・・
最近この青い猫の広場で変な奴らを見かけない?
・・・えっと、俺もまだ実際には見てないんだけど
そこの画材屋の主人がさ、言ってたんだ。
夜になると現れる、バイオリン弾きと歌い屋の話。
なんかそいつらがね?変らしいんだよね。
うーん、俺も詳しくないから解らないんだけど・・
なんか不穏な匂いがするんだ。
・・・だからさ、あんたそろそろ帰った方が良い。
なんとなく・・・そう感じるんだよ。
なんだろう・・・・わからないけど・・・。
うん、じゃあ気をつけて帰って。
家に入ったら、しっかり戸を閉めて。
俺も、今日は片付けて帰る事にするよ。
あ、今度も絵を描いてくるから!
何を描こうかは、まだ悩んでいるけど。
・・・・じゃあ、また!
Salut!!
fin..........
PR
2011/07/22
絵描きのヨエル
Trackback()